2012年5月 5日 (土)

失敗学

「生産活動には、事故や失敗は付き物である。これら、事故や失敗は小さなものから、経済的損失につながるもの、
負傷を伴う大きなもの、さらに多数の死傷者を出す大規模なものまである。「失敗学」は、こういった事故や失敗発生の
原因を解明する。さらに、経済的打撃を起こしたり、人命に関わったりするような事故・失敗を未然に防ぐ方策を提供する
学問である。」 【失敗学会ウェブサイトより】

仕事との関連もあり、「失敗学」について勉強してみることにしました。
畑村洋太郎・東大名誉教授の「失敗学のすすめ」、「失敗学の実践講義」を読みました。

畑村氏は、2011年5月に閣議決定により設置された「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の
委員長であるとともに、失敗学会の創設者でもあり、この道の第一人者と言える方です。

失敗学そのものは、失敗を誹るのが目的ではなく、「失敗は成功のもと」を学問的に追究したような内容であり、
経営学におけるリスクマネジメントやナレッジマネジメントにも通ずる概念のように感じました。
読後感としては、私自身がかつて危機管理の仕事をしたことがあることもあったせいか、取り立てて、何か新しい概念を
得たという感じはしませんでしたが、今後のためにもメモは記載しておこうと思います。

●ハインリッヒの法則(1929年)
 労働災害における経験則の一つ。
 1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。
 災害について言えば、「重傷」以上の災害が1件あったら、その背後には、29件の「軽傷」を伴う災害が起こり、
 300件もの「ヒヤリ・ハット」した(危うく大惨事になる)傷害のない災害が起きていたことになる。

●失敗情報の性質
 ①失敗情報は伝わりにくく、時間が経つと減衰する
  (例)「貸し家と唐様で書く三代目」
   初代が苦労して経済的基盤をつくった商売は、その姿を間近で見てきた二代目によって保持される。
   ところが、先々代の苦労や失敗を知らない恵まれた環境で育った三代目は、簡単に身代を潰してしまうことがよくある。

 ②失敗情報は隠れたがる
  ・失敗は隠したくなるもの。人間の心理としては当然だが、発覚した失敗を嘘をついてまで隠すことはやるべきではない。
   (例)三菱自動車リコール隠し(2000年7月) 

 ③失敗情報は単純化したがる
  ・失敗情報の伝達は単純化せず、細かい経過や原因を含んで行うべき。
   (例)「地震がきたら火を消せ」
      →火災で多くの犠牲者を出した関東大震災の失敗経験を知識化した言葉だが、単純化されている。
        実際は、「地震がきたら、まず振動が収まるのを待って、それからすぐに火を消せ」という教訓。

 ④失敗原因は変わりたがる
  ・関係者の利害によって、失敗が意図的に歪曲化される。
   (例)医療事故(誤投薬)
      →病院の管理体制や看護士への重労働を強いる構造問題に触れず、看護士のミスとして問題を収めようとする傾向。
   (例)チェルノブイリ原発事故(1986年4月)
      →ソビエト政府は事故原因を単なる運転員の規則違反と発表。原子炉そのものに構造的欠陥あったことをひた隠す。

 ⑤失敗は神話化しやすい
  ・悲劇的な物語性のある失敗情報は神話化し、多くの人に伝わる傾向があるが、一面的な見方に偏ってしまいがち。
   (例)悲劇の戦艦大和
      →戦艦大和はウドの大木を連想する人が多くいるが、戦争が大艦巨砲の時代なら立派な戦艦だった。
        しかし、時代は航空機を主体とする戦争であったため悲劇となったにすぎず、こうした時代認識を持てなかった
        軍の判断不良が失敗の主因と理解されるべき。

 ⑥失敗情報はローカル化しやすい
  ・ひとつの場所で起こった失敗は他の場所へは容易に伝わらない。

 ⑦客観的失敗情報は役に立たない
  ・事件・事故の報告書は多くの場合、客観的な立場で全体を見る立場である第三者により作成される。
   そのせいか、批判的な論調や無味乾燥なものになる傾向あり。実際に必要なのは当事者から見た主観的な情報。

 ⑧失敗は知識化しなければ伝わらない
  ・事象、経過、原因(推定原因)、対処、総括、知識化の6項目で記述すべし。
   具体例は、失敗知識データベース(畑村創造工学研究所) にあり。 ttp://www.sozogaku.com/fkd/

●技術の成熟問題
 ・すべての技術は、①萌芽期、②発展期、③成熟期、④衰退・破滅期をたどる。その期間はおよそ30年程度。
  ①萌芽期:技術の脈絡がなんとか形になっている状態。選択肢も貧弱。能率悪い。
  ②発展期:色々なパターンが試され、多くの失敗を繰り返す中で技術が洗練。能率もよく完成度の高いものへ変化。
  ③成熟期:メインルート以外の選択肢が切り捨てられる段階。効率化のため作業の単線化(マニュアル化)が行われる。
         →選択肢が狭められることで技術に対する深い理解ができなくなり潜在能力の低下に繋がる。
  ④衰退期:メインルートがひ弱になり、やがて破滅。
 ・組織でも同様に考えられる。
  →行政は、企業が設備投資なしに生産量が増えていれば、失敗が発生する素地が成長しているのではと疑うべき。

●懲罰的賠償制度と司法取引
 ・日本:責任追究と原因究明を同時に行うため、当事者が刑事責任を避けるために原因を意図的にねじ曲げて報告しうる。
 ・米国:懲罰的賠償制度(意図した失敗や、わかっていても対策を講じなかった未必の故意の失敗には懲罰を与える)や
  司法取引(犯罪〔失敗〕の渦中にある当事者に免責の保証を与え、これと引き換えに真相を語らせる)といった法システムあり。
 →責任追及と原因究明は分離して進める必要がある。

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2012年4月15日 (日)

鵜飼の鵜

4月に人事異動通知をいただきました。新たな心持ちでスタートです。
役人の人事サイクルは2年と短く、早い人では1年に1回異動している人もいます。私も早いものでかれこれ6ポスト目です。

役人はジェネラリストを育てるとはよく言ったもので、仕事の内容が、「マクロ」→「ミクロ」、「経済」→「法律」の分野へと激変しました。新たな職場は、法律を作る部屋(通称:タコ部屋)であり、一緒に働くチームの半分は弁護士という今までにない環境です。せっかくの機会なので違った世界でしっかりと学びたいと思います。

仕事面においては、2つの課題があると思っています。同世代(アラサー)であれば共感できる部分もあるのではないかと思うので備忘録がてらメモしておきます。

まず、一つ目は「マネジメント力の強化」。

「君は、鵜飼の鵜としては立派だが、立派な鵜飼になる必要がある。」

これは、前職の上司からいただいたご指導です。
若手と言われる頃には、自分にできることを一生懸命やれば、事足りたのかもしれませんが、中間管理職になってくると、自分ひとりが頑張るだけでは足りず、いかにマネジメントして魚(成果)を得るかかが重要になってきます。今回は、幸いにもさまざまな経歴を持つ方々と仕事ができる機会を得ました。うまくマネジメントできるのか、「鵜からの脱却」が一つの課題だと思っています。

他方でもう一つの課題。「スペシャリティの研鑽」

仕事とは別に自分のスペシャリティも磨く努力を怠ってはならぬと思っております。
役所に入って、「忍耐力」・「調整力」・「(何でもやるという意味での)器用さ」は多少の比較優位があるのではと感じられる時があります。ポジティブに考えれば、どこでもまあまあやっていけると言えるのかもしれませんが、言い方を変えると「器用貧乏」の言葉の通り、専門分野ができない。専門性は自分で磨くしかないんだとは思うのですが、これはこれでなかなか難しい。働きはじめてからずっとうまく乗り越えられない課題です。

(参考)勤務地がかっこいいオフィスビルに変わりました。まわりには、飲食店が多くあり、コンビニ生活から脱却です。
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2012年3月26日 (月)

日中国交正常化

中国は、日本最大の貿易相手国であり、2010年には、日本のGDPを抜き、世界2位のGDPとなった勢いのある国というのは言わずと知れたことでしょう。それどころか、最近のMcKinseyのレポート「Meet the 2020 Chinese Consumer」(2012年3月)の予測では、実質GDPで、2020年には日本の2倍の規模となるとも言われています。

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出典:「Meet the 2020 Chinese Consumer」(McKinsey&Company,2012)
    ttp://www.mckinseychina.com/wp-content/uploads/2012/03/mckinsey-meet-the-2020-consumer.pdf

今後、ますます、経済的にも重要なパートナーであることは疑う余地はありません。その一方で、重要な近隣国であると認識していながら、過去の歴史をほとんど知らない不勉強な自分がおり、一冊の本を手に取りました。

服部龍二・中央大教授の『日中国交正常化-田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦』を読みました。

高校の教科書では、「中国とは、中華民国(台湾)との日華平和条約を結んだが、1972年の米中首脳会談のあと、田中角栄首相が中華人民共和国を訪れて日中共同声明を発表し、国交を正常化した。」(山川「政治経済」)と1行で表現されている舞台裏に何があったのか。40年を経て、当時の外交文書や関係者の日記やインタビュー等を通じ、仔細に紐解いている内容です。

本書は、2011年度の大佛次郎論壇賞とアジア太平洋賞特別賞とをW受賞しているということもあり、私自身、経済分野でない書物をあまり読んだことがなく、そこで評価される内容というのはどのようなものなのかという観点からも読んでみることにしました。

読後感は次のとおり。実際に、日中国交正常化交渉の場にいるような錯覚を覚えるほど、歴史的な事実を丁寧に積み上げている。それでいて、専門書のような固さがなく、新書で出版されているよさを感じずにはいられなかった。田中・大平両氏の活躍が美しく描かれている印象がありますが、その分、主語が変わらないため、両氏と一緒になって交渉を進めていくような気持ちで読み進めることができました。

また、本書は、「政治主導」のあり方を問う内容でもありました。田中首相・大平外務相・外務官僚(橋本中国課長等)の役割分担は、機能する政治主導の一例として描かれています。あまりに適切な役割を演じているので、美しく描かれている印象が色濃く残っているのかもしれませんが、総じて、本書が評価され、受賞されるのは頷けます。
と、感想だけ書いていると、印象だけで終わってしまうので内容を抽出し、頭の整理用にメモにしておきます。

(時代背景)
●太平洋戦争に敗北した日本は1951年のサンフランシスコ講和会議において独立を回復。
●米国の冷戦戦略に組み込まれた日本は、1952年4月に中華民国政府(台湾)と日華平和条約を結ぶ。
  ・国際連合の安全保障理事会では台湾が代表権を握っており、朝鮮戦争に参戦した中国は1951年の国連総会で
     「侵略国」と名指しされていた。
  ・中国との国交樹立は最大級の外交課題であったが、米中対決が日中国交正常化を阻んでいた。
●1971年7月、米国のニクソン大統領が訪中宣言。同年10月に国連における中国代表権が台湾から中国に移る。
  ・日本への通告は直前であったこと、米国が中華人民共和国を受け入れたことが二重のショック。
     →米国は身勝手に独走するとの印象。
●1972年2月、米国ニクソン大統領が訪中。
●1972年9月、田中角栄首相・大平正芳外相が訪中。日本は中国と国交を樹立し、台湾と断交する。

(論点)
●中華人民共和国(周恩来首相)の復交三原則への対応
 ※「復交三原則」
  ①中華人民共和国が中国唯一の合法政府であること、
  ②台湾は中国領の不可分な一部であること
  ③日華平和条約は不法であり破棄されるべき。

 <①への対応>
  ・共同声明の二で、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」としている。

 <②への対応>
  ・共同声明の三で、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて
    表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく
   立場を堅持する。」としており、中華人民共和国政府の立場を「承認する(recognize)」ではなく「理解し尊重する
   (understand and respect)」という表現がとられたことで、台湾を一方的に中華人民共和国の領土とみなし併合
   しようとする中華人民共和国側の意図を認めなかった。

  ・「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」は栗山条約課長の腹案。
   →「十分理解し尊重する」では法律的に意味がない文句なので、中国は呑まない可能性があり、色をつける必要
     があった。カイロ宣言で、「台湾は中華民国に返還されるべし」と謳っており、それをポツダム宣言が引き継い
     でいる。そういう意味での「一つの中国」に日本はコミットする。他方で、台湾が中国に返還されていないと
     日本は考えていることを示した。

 <③への対応>
  ・共同声明に明記されず。共同声明調印式後に、大平外相が談話を発表し、「日中関係正常化の結果として、
   日華平和条約は存続意義を失い、同条約は終了したと認められるというのが、日本政府の見解である。」と述べた。
   中華民国政府は即日外交部声明を出し、対日断交を宣言外交関係が終了した。
   →大平談話は、内閣法制局とも検討を重ねた内容。栗山氏曰く「政府承認の変更に伴って不可避的に生じる
    随伴的効果による日華平和条約の実体規定の終了については、中華民国政府との合意を必要とせず、
    また、国会の承認も必要としない」(実際には、台湾側に内報したが異議はなかった。)
   →日華平和条約は合法であったことを日本側は譲らなかった。

●謝罪と戦争終了の時期
  ・中国案では「日本国政府は、過去において日本軍国主義が中国人民に戦争の損害をもたらしたことを深く反省する」
   「本声明が公表される日に、中華人民共和国と日本国との間の戦争状態は終了する」としていた。
  ・日本側は、国内の保守派を刺激する「日本軍国主義」という表現は受け入れ難く、認めず、「日本側は、過去において
   日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」とした。
   戦争終結の時期についても、日中双方がそれぞれ異なった解釈を行いうる余地が生じる表現とした。
   前文に「戦争状態の終結」を記しつつ、共同声明の一に、「日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な
   状態は、この共同声明が発出される日に終了する。」と、「不正常な状態」と表現し、ぼかした。

●賠償問題
  ・共同声明の五で、放棄することを記載。
  ・1972年7月に竹入義勝公明党委員長が訪中し、周恩来と北京で会談。そこで、「日米安保条約に触れないこと」、
   「佐藤・ニクソン共同声明(台湾の安全は日本の安全保障にとっても重要という趣旨が記載)にも触れないこと」、
   「毛沢東主席は賠償請求権も放棄すること」等の考えを聞きだしており、日中国交正常化に向けた交渉を行う
   田中首相の決意を固めることになる。
   なお、この際、周首相より、「台湾は中国人民共和国の領土であって、台湾を解放することは、中国の内政問題である」
   と提案し、これを黙約事項にしたいという申し入れもあったが、密約としなかったのは上記のとおり。


(参考)日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明 

 日本国内閣総理大臣田中角栄は、中華人民共和国国務院総理周恩来の招きにより、千九百七十二年九月二十五日から
 九月三十日まで、中華人民共和国を訪問した。田中総理大臣には大平正芳外務大臣、二階堂進内閣官房長官その他の
 政府職員が随行した。
 毛沢東主席は、九月二十七日に田中角栄総理大臣と会見した。双方は、真剣かつ友好的な話合いを行った。
 田中総理大臣及び大平外務大臣と周恩来総理及び姫鵬飛外交部長は、日中両国間の国交正常化問題をはじめとする
 両国間の諸問題及び双方が関心を有するその他の諸問題について、終始、友好的な雰囲気のなかで真剣かつ率直に
 意見を交換し、次の両政府の共同声明を発出することに合意した。
 日中両国は、一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好の歴史を有する。両国国民は、両国間にこれまで存在
 していた不正常な状態に終止符を打つことを切望している。戦争状態の終結と日中国交の正常化という両国国民の願望
 の実現は、両国関係の歴史に新たな一頁を開くこととなろう。
 日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。
 また、日本側は、中華人民共和国政府が提起した「復交三原則」を十分理解する立場に立って国交正常化の実現をはかると
 いう見解を再確認する。中国側は、これを歓迎するものである。
 日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべきであり、また、樹立することが
 可能である。両国間の国交を正常化し、相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致するところであり、
 また、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである。

一  日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。
二  日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
三  中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、
     この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
四  日本国政府及び中華人民共和国政府は、千九百七十二年九月二十九日から外交関係を樹立することを決定した。
     両政府は、国際法及び国際慣行に従い、それぞれの首都における他方の大使館の設置及びその任務遂行のために
     必要なすべての措置をとり、また、できるだけすみやかに大使を交換することを決定した。
五  中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。
六  日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、
     平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。
   両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を
     平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。
七  日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を
     求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。
八  日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、平和友好条約の締結を
     目的として、交渉を行うことに合意した。
九  日本国政府及び中華人民共和国政府は、両国間の関係を一層発展させ、人的往来を拡大するため、必要に応じ、また、
     既存の民間取決めをも考慮しつつ、貿易、海運、航空、漁業等の事項に関する協定の締結を目的として、交渉を行うこと
     に合意した。

千九百七十二年九月二十九日に北京で
 
 日本国内閣総理大臣   田中角栄(署名)
 日本国外務大臣   大平正芳(署名)
 中華人民共和国国務院総理   周恩来(署名)
 中華人民共和国 外交部長   姫鵬飛(署名)

2012年3月13日 (火)

マクロ政策メモ(March,2012)

本日、金融政策決定会合(MPM)がありましたのでマクロ政策メモをリバイス。
MPMの主な内容は下記3点。

  ✓成長基盤支援の融資制度を2年延長するとともに、2兆円増額。
  ✓被災地金融機関を支援するための資金供給を1年延長。
 ✓宮尾委員の追加緩和提案(資産買入基金の規模増額5兆円)は反対多数で否決(1対8)

市場には、今回の措置はサプライズとは到底言えないものの、ゼロ回答でもないという玉虫色の結果自体を
評価する声もあるようです。(経済も株価も関係なく無理やり金融緩和する日銀になったとみられること
は得策ではない。かといって一部の市場参加者が抱く日銀は変わったとの印象を否定する必要もない。)

次は4月の展望レポートが出るタイミングで、基調判断がよくなると見込まれる中でも追加緩和(資産買入基金増額)があるかが焦点ですかね。

 

マクロ政策メモ(March,2012)

■財政政策:東日本大震災からの復興対策もあり、引き続き拡張路線。

(1)短期
 ○2011年度1~4次補正は執行中。2012年度本予算は国会で審議中。
 (うち、震災復興のため約18兆円予算計上〔10年間で総額23兆円程度〕)

(2)中長期(財政健全化)
 ○「社会保障・税一体改革大綱」(2012年2月閣議決定)
 ・社会保障・税一体改革素案(2012年1月、政府・与党社会保障改革本部決定)と同じ内容。
 ・2011年度中に法案化・成立できるか?(附則104条との関連)
 ・消費税率引上げ:2014年4月(5%→8%)、2015年10月(8%→10%)

 ○財政健全化目標【財政運営戦略(2010年6月)】
  ・2015年度までに2010年度比でPB赤字(対GDP比)半減(▲6.4%→▲3.2%)
 ・2020年度までにPB黒字化

(3)中長期(経済成長)
 ○GDP成長率目標【新成長戦略(2010年6月)】
 ・2011年度~2020年度の平均で名目3%程度、実質2%程度

 ○「日本再生の基本戦略」(2011年12月)
 ・今後、施策の具体化を進め「日本再生戦略」を策定(2012年央策定予定)

 (注)2009年度所得税法等改正法附則第104条1項
  政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の
  社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む
  3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、
  かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を
  講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)
  の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。

■金融政策:包括的金融緩和政策を継続中。
 ・当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策
  と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進。

(1)政策金利の引下げ
 ・2008年10月:無担保コールレート誘導目標0.5%前後→0.3%前後
 ・2008年12月:無担保コールレート誘導目標0.3%前後→0.1%前後
 ・2010年10月:無担保コールレート誘導目標0.1%前後→0~0.1%程度

(2)長期国債買入れ
 ・2002年10月:増額(年12.0兆円→14.4兆円)(月1.0兆円→1.2兆円)
 ・2008年12月:増額(年14.4兆円→16.8兆円)(月1.2兆円→1.4兆円)
 ・2009年3月:増額(年16.8兆円→年21.6兆円)(月1.4兆円→1.8兆円)

(3)中長期的な物価安定の目途(2012年2月導入、原則1年ごとに点検)
  →日本銀行として、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したもの
 ・2012年2月:消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域。当面は1%を目途とする

(4)その他の主要措置

 ○固定金利オペ(2009年12月~現在)
  → 低金利で、やや長めの資金を供給することで、短期金融市場においてやや長めの金利を低下させるための措置

  ・2009年12月:無担保コールレートの誘導目標と同水準の金利で期間3ヶ月の資金を10兆円供給
 ・2010年3月:10兆円→20兆円に増額。
 ・2010年8月:期間を6ヶ月物導入(10兆円)、計30兆円
 ・2011年8月:6か月物拡充(10兆円→15兆円)、計35兆円

 ○成長基盤強化を支援するための資金供給(2010年6月~2014年3月末) 

  ①本則(2010年6月~2014年3月末):1000万円以上の投融資、年0.1%、最長4年
   ・2010年6月:民間金融機関が成長分野に向けて行う融資や投資に対して日銀が無担保コールレートの誘導目標
    水準と同水準の金利で長期(最長4年)の資金を供給。日銀が例示した成長分野は、研究開発、環境、
    エネルギー、医療、介護、観光等18分野。[3兆円]
   ・2012年3月:3兆円→3.5兆円に増額、期間延長(2012年3月末→2014年3月末)

  ②ABL特則(2011年6月~2014年3月末):100 万円以上のABL出資、年0.1%、最長4年
   ・2011年6月:出資や動産・債権担保融資(ABL)等を対象として、新たな貸付枠を設定[0.5兆円]
   ・2012年3月:期間延長(2012年3月末→2014年3月末)

  ③小口特則(2012年3月~2014年3月末):100万以上1000万円未満の投融資、年0.1%、最長4年
   ・2012年3月:わが国経済の成長に資すると認められる、1件当たり100万円以上1000万円
    未満の投融資。金額以外の要件は本則と同じ。[0.5兆円]

  ④米ドル特則(2012年3月~2014年3月末):外貨建て投融資、市場金利、最長4年
   ・2012年3月:わが国経済の成長に資すると認められる、1年以上の外貨建て投融資。
    米ドル資金の有担保貸し付け。日本銀行が保有する米ドル資金のうち1兆円相当。

 ○包括的な金融緩和政策(2010年10月~現在)
  ・2010年10月:包括的な金融緩和政策の実施
     ①無担保コールレート誘導目標を0~0.1%程度に引下げ[既述]

     ②「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで実質ゼロ金利政策を維持
   (注)物価安定の理解:CPIの前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度

     ③臨時措置として、国債・CP・社債・ETF・J-REITなどの多様な金融資産の買入れなどのための基金創設
        (総額35兆円[買入れ5兆円、固定金利オペ30兆円])

   ・2011年3月:資産買入れ等基金の増額(35兆円→40兆円)(震災対応)
  ・2011年8月:資産買入れ等基金の増額(40兆円→50兆円)
   ・2011年10月:資産買入れ等基金の増額(50兆円→55兆円)
  ・2012年2月:資産買入れ等基金の増額(55兆円→65兆円)
  (注)基金の内訳:資産買入れ(30兆円)+固定金利オペ(35兆円)
  (注)資産買入れ等基金(30兆円)の内訳:
     長期国債(19兆円)+国庫短期証券(4.5兆円)+CP等(2.1兆円)+社債等(2.9兆円)+ETF(1.4兆円)+J-RIET(0.11兆円)

 ○被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション(2011年4月~2013年4月末)
 ・2011年4月:東日本大震災の被災地の金融機関向けに固定金利(0.1%)で長め(1年)の資金を供給。
         貸付総額上限1兆円、対象先ごとの上限額1500億円(2011年10月末迄)
 ・2011年10月:貸付受付期限延長(2011年10月末→2012年4月末)
 ・2012年3月:貸付受付期限延長(2012年4月末→2013年4月末)

(5)リーマンショック後に行われた措置【既に終了】

 ○企業金融支援特別オペ(2009年1月~2010年3月末)
  →民間企業債務の担保価額の範囲内で、金額に制限を設けずに、無担保コールレートの誘導目標と同水準の金利で
       資金を供給

 ○CP等買入れ(2008年12月~2009年12月末)、社債買入れ(2009年2月~2009年12月末)

2012年3月 9日 (金)

政策評価制度

日本の政策評価制度について少し調べたので備忘録がてらにメモとその所感を記載。

<Mitsuhiro所感>
●政策評価制度の意義・重要性は理解できるが、行政現場での実体は仕事のための仕事になっている印象。

●制度を当初の問題意識に沿って強固に運用すれば、政策決定における総務省行政評価局が財務省主計局とついに
  なる権限を持つことも考えられるが、異なる政策領域でプライオリティづけができないのでそのフィージビリティは低い。
   政策評価制度自体の費用対効果が悪い可能性あり。

●分析手法は勉強すると意外に面白いかもしれない。C/B分析,包絡分析法(DEA)など。

<経緯・制度>
●2001年の中央省庁再編の一環として政策評価制度が開始。(我が国の行政においては、法律の制定や予算の獲得等
   に重点が置かれ、その効果やその後の社会経済情勢の変化に基づき政策を積極的に見直すといった評価機能は軽
   視されがちであったとの認識に基づくもの【行政改革会議最終報告(平成9年12月)】)

●政府全体の政策評価に関する基本方針を策定するとともに、各省庁が所管する政策について、中期的な基本計画と
   1年ごとの実施計画を策定し、自ら評価を行い、政策評価の結果について、評価書を公表することを法律(通称:評価法)
   で定めている。政策評価の結果は、予算査定等に活用されている。

<公共事業の評価>
●公共事業の評価は、評価法に基づき、事業費10億円以上のものに関して事前評価が義務づけられており、費用便益
   分析を活用して政策評価が行われている。

●事前評価以外にも、政策決定後5年間未着手又は10年間未了の政策について事業継続を行うかどうかの再評価や、
   事業完了後に事業の効果や環境への影響等の確認を事後評価として行っている。

<費用便益分析(Cost-Benefit Analyses)>
●費用便益分析は、貨幣換算した便益だけでなく、貨幣換算することが困難な定性的な考課項目も含めて事業の投資
   効果を評価している。ここでは、費用便益比(Cost Benefit Ratio)が評価指標として用いられており、貨幣換算できる
   効果の総現在価値(B)と費用の総現在価値(C)の比が、一般的に1を上回ること(B/C≧1)が事業採択の基準とされ
   ている。

●割引率については、金利や将来の物価上昇等を考慮して4%、評価期間は個別事例に応じた適切な期間を設定する
   こととしており、成果物の耐用年数によって期間を設定している(概ね30~50年)。

●費用便益分析は、①施策等がもたらす社会的便益と社会的費用を、貨幣価値に換算できる限り、一つの指標に組み
   込めるため、結果の判定が明確となること、②同じ費用便益分析手法を用いれば、その結果を相互比較することが可能
   であることなどの長所があるが、必ずしもすべての便益や費用が測定・推計されているわけではないという限界もある。
   【経産省「政策評価の現状と課題」より要約、平成11年8月)】

●総務省において、各省庁が個別に実施する公共事業に係る政策評価の点検作業を行っている。
  最新の点検結果により見出された費用便益分析の一般的な課題として、次の2点が指摘されている。
 ①便益の過大推計・費用の過小推計の可能性、②マニュアルの不備

<政策評価でできること・できないこと>
●できないこと
 ①異なる政策領域でのプライオリティーの設定
  ②異なる政策領域での資源配分に役立つ情報の提供
  ③政策に関わる強い合意形成

●できること
 ①特定の政策領域における便益と費用構造の把握
  ②政策執行における問題点の把握
  ③予算要求に関わる情報の提供

●条件がそろえば、できるかもしれないこと
 ①人事評価とのリンク
  ②組織別の資源管理

  【出典:東大公共政策大学院HPより(ttp://www.pp.u-tokyo.ac.jp/events/workshop/summary/ws20040716.htm)】

2012年3月 7日 (水)

日銀からのバレンタインチョコ

ホワイトデーが近づいてきて、遅ればせながらに、チョコの感想を書きます。
2月14日のバレンタインデーに、日銀から甘いチョコレートが届いた。同日の金融政策決定会合で「中長期の物価安定の目途(めど)」を決定したとのニュースのことである。まぁ、実際はそれほど甘くない小さなチョコだったわけだが、恋焦がれていた人達には本命チョコと映ったのかもしれない。。。

報道では、「日銀:インフレ目標導入 政治の包囲網に屈し(毎日)」などと、ついにインフレターゲットを導入?とはやし立てていたが、このニュースの価値についての一般的な模範解答は次のようなものだ。

『日本銀行が新たに導入した「物価安定の目途」はCPI1%を目指したインフレ目標政策と理解される。「物価安定の目途」の実現を目指しての金融政策運営を実践すれば、期待インフレ率が上昇し、デフレ脱却に近づくことが期待される。』(伊藤忠経済研究所より引用)

政府の認識も上記とほとんど変わらず、私も役人として答えを求められれば、似たことを答えるだろう。
それはそれとして、日銀の動きを趣味的にウォッチしている者としての率直な感想もある。
はじめ聞いたときは、「『物価安定の理解』とどう違うの?」と思い、その後「(実質的にほとんど変えずに)見た目を変えただけでうまくやったね。」というものだ。

「中長期の物価安定の目途」が決まったことの本質的な意義は、①主語が「各政策委員」から「日本銀行」となったことだ。そして、副次的な意義としては、②小さなコストでインフレターゲット論者からの批判への対応策となったことだろう。

①としては、半歩進んだとも言えない(0.2歩進んだくらい)の変更ではあるが、本質的に変えたこととして、「日本銀行として」中長期的に持続可能な物価安定と整合的と判断する物価上昇率を示したことである。
信じがたいことではあるが、今までは、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を示していた。あくまで、「日銀の政策委員」が理解する物価上昇率の平均値という位置づけであり、「日本銀行」としての物価上昇率のあるべき値ではなかったのである。そもそも、「金融政策決定会合で意思決定する政策委員の平均にも関わらず、日本銀行全体の考え方でない」と言い切っていたこと自体に無理があるように思えるくらいであるが、従前は、国会等で批判されてもそう抗弁してきた。ちなみに、目標とする物価上昇率の数値自体は、現時点では、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にある」とある程度幅を持って示し、そのうえで、「当面は1%を目途」としており、実質的に「物価安定の理解」から変更されていない(=実質的にはコストがかかっていない。)

②としては、少なくとも、同日の会見で安住財務大臣が「実質的にインフレターゲットを設定されたものと受けとめている」とコメントし、白川日銀総裁も「財務大臣と同じ認識」と答えていることから、インタゲ推進派に表向きでは歩みよったように見えることだ。上記のとおり、実質的に0.2歩分のコスト(主語が変わっただけ)であり、その目標が達成されなかった場合の罰則規定等があるわけではなく、実質的にはほとんど変わっていないにも関わらず、こうした勢力への対応を行なったという武器となり、批判をうまくかわすことができる。事実、テレビ等を見ていると、「インフレターゲット導入という難しい決断をついにやったんだな。日銀もとても頑張ってるな」と見える。ちなみに、英語では、「The price stability goal in medium to long term」と記載されており、「目途」を「goal」と表現しているおまけつき。

実にうまくやったものです。色々批判はありますが、私は、こうした日銀の手堅い政策運営は見習うべき点が多いと思っています。

ちなみに海外ではどうとらえているのか。面白かったので、2月22日のFinancial Timesのコラムを紹介しておきます。

タイトルは、『BoJ tinkering falls short of a conversion』
ざっくり訳すと、『日銀の政策変更は、ダマスコの回心(Damascene conversion)(注)には及ばない』という記事です。
(注)ダマスコの回心:聖書の一節で、パウロがダマスコに向かう途中で復活したイエスに出会い、劇的な回心をしたこと

一見すると、日銀が消費者物価の上昇率に一定の目途を採用したことは、ダマスコの回心に相当するような金融政策の大転換に見えるとしながらも、最後のパラでは、『Mr Shirakawa even suggests it might be time to retire the “inflation targeting” label. Put like that, it is clear that his goal is not a conversion but part of an ongoing international conversation.』としており、白川総裁の目的は、劇的な方針の大転換(conversion)ではなく、国際的な対話の一環(conversation)であったと綴っています。

さすがは、FT・・・洒落まで効かせた冷静なコメントです(笑)

(参考)FTの記事
  ttp://www.ft.com/intl/cms/s/0/d8b37f1e-5bdd-11e1-841c-00144feabdc0.html#axzz1oMt1NmBW

2012年2月 8日 (水)

マクロ政策メモ(February,2012)

気がつくと、更新が滞ってしまっています。頭の整理用ですが、日本のマクロ政策の現状メモです。

■財政政策:東日本大震災からの復興対策もあり、引き続き拡張路線。

(1)短期
 ○2011年度1~3次補正は執行中。4次補正は本日成立。2012年度本予算は明日から国会で審議。
 (うち、震災復興のため約18兆円予算計上〔10年間で総額23兆円程度〕)

(2)中長期(財政健全化)
 ○「社会保障・税一体改革素案」(2012年1月)【政府・与党社会保障改革本部決定】
 ・2011年度中に法案化・成立できるか?(附則104条との関連)
 ・消費税率引上げ:2014年4月(5%→8%)、2015年10月(8%→10%)
 ○財政健全化目標【財政運営戦略(2010年6月)】
  ・2015年度までに2010年度比でPB赤字(対GDP比)半減(▲6.4%→▲3.2%)
 ・2020年度までにPB黒字化

(3)中長期(経済成長)
 ○GDP成長率目標【新成長戦略(2010年6月)】
 ・2011年度~2020年度の平均で名目3%程度、実質2%程度
 ○「日本再生の基本戦略」(2011年12月)
 ・今後、施策の具体化を進め「日本再生戦略」を策定(2012年央策定予定)

 (注)2009年度所得税法等改正法附則第104条1項
  政府は、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の
  社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ、平成20年度を含む
  3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、
  かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を
  講ずるものとする。この場合において、当該改革は、2010年代(平成22年から平成31年までの期間をいう。)
  の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする。

■金融政策:包括的金融緩和政策を継続中。

(1)政策金利の引下げ
 ・2008年10月:無担保コールレート誘導目標0.5%前後→0.3%前後
 ・2008年12月:無担保コールレート誘導目標0.3%前後→0.1%前後
 ・2010年10月:無担保コールレート誘導目標0.1%前後→0~0.1%程度

(2)長期国債買入れ
 ・2002年10月:増額(年12.0兆円→14.4兆円)(月1.0兆円→1.2兆円)
 ・2008年12月:増額(年14.4兆円→16.8兆円)(月1.2兆円→1.4兆円)
 ・2009年3月:増額(年16.8兆円→年21.6兆円)(月1.4兆円→1.8兆円)

(3)その他の主要措置

 ○固定金利オペ(2009年12月~現在)
  → 低金利で、やや長めの資金を供給することで、短期金融市場においてやや長めの金利を低下させるための措置
  ・2009年12月:無担保コールレートの誘導目標と同水準の金利で期間3ヶ月の資金を10兆円供給
 ・2010年3月:10兆円→20兆円に増額。
 ・2010年8月:期間を6ヶ月物導入(10兆円)、計30兆円
 ・2011年8月:6か月物拡充(10兆円→15兆円)、計35兆円

 ○成長基盤強化を支援するための資金供給(2010年6月~現在)
 ・2010年6月:民間金融機関が成長分野に向けて行う融資や投資に対して日銀が無担保コールレートの誘導目標水準と
    同水準の金利で長期(最長4年)の資金を供給。日銀が例示した成長分野は、研究開発、環境、エネルギー、医療、介護、観光等
    18分野。[3兆円]
 ・2011年6月:出資や動産・債権担保融資(ABL)等を対象として、新たな貸付枠を設定[0.1%、0.5兆円]

 ○包括的な金融緩和政策(2010年10月~現在)
  ・2010年10月:包括的な金融緩和政策の実施
     ①無担保コールレート誘導目標を0~0.1%程度に引下げ[既述]
     ②「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで実質ゼロ金利政策を維持
   (注)物価安定の理解:CPIの前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度
     ③臨時措置として、国債・CP・社債・ETF・J-REITなどの多様な金融資産の買入れなどのための基金創設
        (総額35兆円[買入れ5兆円、固定金利オペ30兆円])
   ・2011年3月:資産買入れ等基金の増額(35兆円→40兆円)(震災対応)
  ・2011年8月:資産買入れ等基金の増額(40兆円→50兆円)
   ・2011年10月:試算等買入れ基金の増額(50兆円→55兆円)
  (注)基金の内訳:資産買入れ(20兆円)+固定金利オペ(35兆円)
  (注)資産買入れ(20兆円)の内訳:
     長期国債(5兆円)+国庫短期証券(4.5兆円)+CP等(2.1兆円)+社債等(2.9兆円)+ETF(1.4兆円)+J-RIET(0.11兆円)

 ○被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション(2011年4月~2012年4月末)
 ・2011年4月:東日本大震災の被災地の金融機関向けに固定金利(0.1%)で長め(1年)の資金を供給。
           貸付総額上限:1兆円、対象先ごとの上限額:1500億円(2011年10月末迄)
 ・2011年10月:期間延長(2012年4月末迄)

(4)リーマンショック後に行われた措置【既に終了】

 ○企業金融支援特別オペ(2009年1月~2010年3月末)
  →民間企業債務の担保価額の範囲内で、金額に制限を設けずに、無担保コールレートの誘導目標と同水準の金利で
       資金を供給

 ○CP等買入れ(2008年12月~2009年12月末)、社債買入れ(2009年2月~2009年12月末)

2012年1月10日 (火)

馬車馬にニンジン

年頭所感の後ですが、早くも逃げ出したい気持ちでいっぱいなので、文字にします。
「今年1年は英語の勉強を頑張るぞ」と。

英国外務省が行っている奨学金制度があり、先日、人事から受験してはどうかと打診がありました。

実質1年間で極度に苦手意識の強い英語でスコアを出さねばなりません。

具体的には、IELTS(アイエルツ)という試験で6.5という高い水準が必要となり、この試験では、苦手なスピーキングやヒアリングもあり、それだけでも死にそう。さらには、奨学金の試験には面接もあり、日本人では合格者は実質2名程度と言われていることから、気が遠くなりそうですが、せっかく頂いたチャンスなので、できる、できないは別として頑張ろうと思います。

散々、忙しさにかまけて、挫折し、逃げまくっていた英語の勉強。仕事ばかりの馬車馬の前にニンジンが用意された格好になりました。目の前のニンジンを追うことをあきらめないことがまずもっての目標です。

2012年1月 1日 (日)

年頭所感「いまが大事」

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

本年は、世界に目を向けると、ユーロ圏の政府債務問題で世界経済の不確実性は高まるばかり。国内に目を向けても、期待された「どじょう内閣」も、今では、「ヌルヌルしていて掴みどころがない」などと批判が出る始末で閉塞感は否めません。事実、掴みどころがないと茶化されても仕方がなく、野田内閣がどうこうというよりは、最近の政権で、何かこれをやったという政策がひとつもないことに問題を感じます。社会保障・税一体改革の考え方は悪くはないのに、実態は、歳出(社会保障)削減が聖域のように扱われ頓挫し、歳入(消費税増税)だけを議論しているのは、奇妙な感じがします。その歳入部分でさえ、法案が成立する気配はなく、誰でもいいから、何かひとつでも政策を形にしてほしいという気がしてなりません。何もしていないのに、リーマン・ショック以降、財政拡張が続く現状を真摯に考える必要があるのではないでしょうか・・・まぁ、外部環境をごだごた言ってても仕方ありませんので、自分自身は研鑽を積まねばと思っておるところです。

先に出てきた「どじょう内閣」は、相田みつをさんの『どじょうがさ 金魚のまねすることねんだよなあ』という言葉が好きだと野田さんが民主党の政見演説で述べたことがルーツですが、せっかくなので、本年は、相田みつをさんから、教訓を頂戴し、年頭所感としたいと考えています。

『あとじゃできねんだよなあ いまのことは いましかできぬ』

気づけば、立派なアラサーになってしまいました。やりたいなぁと思って、後回しにしていることは全部やるように生きていく。この姿勢は大事だと思います。あれこれ考えるだけでなく、アクションを起こす。とにかく前へ進む。その推進力が必要だと思います。そのためには、限られた時間でできることに取捨選択を行い、情だけに流されない強い意志が必要であるように思います。「仕事」、「家庭」、「勉強」、どうしても優先順位上、一番最後になる「勉強」に力を入れられるよう頑張りたいと思います。

2011年11月19日 (土)

研究者の世界

平日は仕事の日々。土曜は授業。
あっというまに1週間、1ヶ月と時間が過ぎ去っていきます。

最近は土曜日は朝から晩まで大学にいることが多いです。というのも、財政論の先生のご厚意もあり、科目履修生でとっている財政論の授業の後、ゼミにも参加させてもらっています。生徒は博士課程の方々ばかりで、それぞれの研究テーマについて発表があり、それに対して討論する形式をとっています。もちろん、その後のゼミ飲みにも参加しています。学生時代には普通だったことではありますが、今となっては非常に新鮮な気持ちを与えてくれ、霞ヶ関の中だけでいると世界が狭くなってしまうことを実感します。

ゼミ飲み会といっても、色んな人がやって来ます。先日は、国士舘大学の法学部の教授とお話する機会がありました。酒宴の席ですので、小難しい話はしませんが、最近の学生事情、女性の社会進出の困難さ、早稲田大学・Duke大学時代の先生の思い出話などを伺い、何より、こちらも、役人としての公式答弁でなく、私個人の意見を相手にぶつけることができるので有意義な時間を送ることができました。

今日は、月に一度、財政学の研究者がインカレで行っている勉強会にも誘われ、参加してきました。発表者が自分の論文を30分程度でプレゼンし、それを教授達及び様々な大学の院生が批評する(90分程度)というものでした。
今回は、法政大学の博士課程の方が、コンパクトシティー政策(参考1)の効率性についての論文を説明していました。ざっくり言えば、地方自治体の歳入-歳出を最大化するような人口密度を推計し、コンパクトシティー政策が財政にどのような影響を与えるのかを分析し、最適なコンパクト度をはかりましょうという内容で、歳出面では、最適人口規模論の先行研究にならい、一人当たり一般会計歳出総額と人口密度の関係から推計し、歳入面は公示地価データと500m国勢調査人口データをGIS(参考2)で結合し、求めた地価関数から歳入(資産税)関数をつくり、そこから最適コンパクト度を求めていました。
私なんかが聞いていると「へぇー、よくできてるなぁ」などと感心したのですが、教授陣他からはそもそも論・技術論含めコメント(批評)の嵐。説明した院生も防戦一方・・・
これが研究者の世界かと、感心するとともに、自らの勉強不足を実感しました。

夕飯は、妻と東京で待ち合わせして、もつ福@丸ビルで。
寒くなってきたら、もつ鍋と焼酎は最高です。ここのレバカツも絶品。毎年一度は食べにきます。
丸の内界隈のイルミネーションも綺麗でした。冬の訪れを感じます。


(参考1)コンパクトシティーとは (知恵蔵2011より引用)
中心部に様々な機能を集約し、市街地をコンパクトな規模に収めた都市形態、あるいはそうした形態を目指した都市計画の総称。大都市が膨張したために中心部のスプロール化が進み、その一方で多くの人口が移転した郊外で農地や緑地の減少が進行した結果、都市の規模を縮小しようとする発想が注目されるようになった。都市の機能を徒歩や自転車で移る範囲に収めることによって、高層建築や古い木造住宅の密集する市街地を再開発し、自然環境や文化遺産の保護、地域のコミュニティーの創出など、少子高齢化社会へのきめ細かな対応を図ることを主な目的としている。ニューアーバニズムやアーバンビレッジとも呼ばれ、米国やEU諸国では1990年代から研究が行われ、コレクティブハウジングの導入などが進められていた。札幌、青森、仙台、神戸などの地方都市が都市政策に取り入れ、また国土交通省も検討委員会を発足させるなど、以前は都市部への人口集中を懸念する声が大きかった日本でも、コンパクトシティーをめぐる議論が深まりつつある。今後は地域ごとの違いを見据えた、より周到な研究や政策を進める必要があるだろう。

(参考2)地理情報システム(GIS:Geographic Information System)(国土地理院HPより)
地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術である。平成7年1月の阪神・淡路大震災の反省等をきっかけに、政府において、GISに関する本格的な取組が始まった。その中核となる取組が、国土空間データ基盤の整備である。ハードウェア、ソフトウェアの低価格化が進み、簡易なGIS導入が可能になる一方で、地図データ等については、電子化されていない、データ仕様が異なり利用できない等の問題があり、GISを導入する主体が、各々整備する必要があり、社会的には二重、三重の投資となる等の問題があった。このため、GISを高度に活用できる社会の実現のためには、地図情報の電子化のみならず、それを活用していく技術、制度、人材等が必要であり、これらの総体を社会的な基盤としてとらえ、その総合的、体系的な整備を図っていく必要性が認識され始めた。このような背景のもと、平成19年5月には、地理空間情報の活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的として、地理空間情報活用推進基本法が、国会で制定された。


20111119a (丸の内界隈)

20111119b (丸の内界隈:三菱1号館)

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